


若い頃に表装を習いました。
好きな絵や書を自分で掛け軸に仕立てる、その工程にのめりこみ楽しい時間を
費やした記憶があります。
そのうちに、仕事で扱う掛け軸のお仕立てに、目がいくようになり
古いお軸の表装には金襴や緞子といった古の裂が使われていることが解ります。
その美しい刺繍裂で仕立てられた掛け物をみているとそれぞれの意味合いが込められているようで
掛け軸を眺める楽しみは深まるばかりです。
最近はぐんと古い掛け軸ににめり込んでいく私がいて
古いお軸の裂の素晴らしさを、どう伝えようと、はやる気持ちばかりが
先回りしますが、なかには同じような思いになるお客様もいてくださいます。
表具、意味合いともに心が動くお軸は少ないですが、そういうモノが行くべきところに
辿り着けば、私の仕事は本当に幸せな仕事だと言わざるを得ません。
今日の掛け物は古い古い大和絵のお軸です。
作者名も不詳、かなりの時間が経過しています。
中回しには地模様入りの紫の古裂、松の木の足元でくつろぐ御家来衆の着物にある家紋と
なにか繋がりがあるような気がしています。
そんな想像まで膨らませる掛け軸の美の世界に夢中でおります。
納戸から久しぶりに引っ張り出した古い李朝の四方膳。
お軸を眺めながら、お茶を点てました。
小布施の栗ようかんとともに一服。









作者は鹿都部真顔(しかつべのまがお)
江戸後期の狂歌師・戯作者。
素敵な掛け軸と出会う。
ヨーロッパ更紗の表装が美しい。
青いカキツバタの花が描かれ、その横に恋の歌が一句。
ふたつまで たしなむ花は かきつばた
にほえる妹が 袖のかがり香
久しぶりに大きな李朝膳を手に入れました。
昔はたくさんありましたが、今では本当に貴重な工芸品になってしまったと思います。
このくらいの大きさがあれば、二人で食事も、そして一人での書き物の机にも活用できそう。
大切にしている古伊万里蛸唐草の蕎麦猪口と同じ蛸唐草の六寸皿を置いてみる。
忙しない毎日も、心癒す道具や器があるだけで気持ちは満たされます。
そんな暮らしを続けていきたいなと、あらためて思う今日でした。




幸野楳嶺 (1844-1895)
日本画家。京都に生まれる。
花鳥画を得意とし、1880年(明治13年)に望月玉泉らと京都府立画学校を設立し、出仕。
京都青年絵画研究会、京都美術協会を組織するなど日本画の発展と後進の指導に尽力。
門下から京都画壇を代表する竹内栖鳳、菊池芳文、川合玉堂、都路華香、上村松園ら多くの画家を輩出。




若武者



ゆり根

牡丹

ユリ


トンボ
季節の掛け軸と李朝膳展
李朝膳とお軸、数年ぶりの会になります。
少しずつ集めた時代のある李朝膳と、季節の掛け軸をご覧いただきます。
李朝膳も掛け軸もすべて一点もののため、同じ膳、同じお軸はありません。
この機会に素敵な空間の置きモノを見つけてください。
4月11日(土)~4月19日(日)
OPEN 12:00 - 19:00
器ギャラリー満に於いて

